0511 Schimpfwort – swear words – juron – 罵倒語 IVf

IV-5 社会的・経済的地位において標準より劣等とみなされる人々(2)

3 少数民族・先住民

 日本の少数民族かつ先住民と言えば、アイヌ民族で、国連に勧告された2008年の国会決議を受けた2019年の「アイヌ施策推進法」により、ようやく先住民と認められましたが、それ以前はいわゆる「土人」扱いで、歴史的に差別や貧困を強いられて来ました。

 一般的にアメリカ・インディアンをアメリカ先住民と言い換えたりするようになってきましたが、言葉を変えただけでは、その凄惨な歴史を塗り替えることはできません。筆者は、1971年に日本でキャンディス・バーゲン主演の西部劇『ソルジャー・ブルー』(Soldier Bleu, Das Wiegenlied vom Totschlag)を見てショックを受けましたが、その1864年に星条旗を掲げたブラック・ケトル酋長のシャイアン族の村がコロラド民兵隊に襲撃された「サンドクリークの虐殺」は、以後のアメリカ政府の原住民政策の嚆矢ともなったと言えましょう。作品中の凄惨な場面は、ベトナム戦争のソンミの虐殺の寓意と言うことでした。1869年にもこれが繰り返され、カスター中佐率いる第7騎兵隊がまたもや平和を求めるブラック・ケトル酋長のシャイアン族の村を急襲し、酋長以下多くの原住民を殺戮しています。

4 女性

 家父長制度の世界はまた男性優位の世界で、キリスト教では世界の頂点に立つ神さまも長い白い髭を生やした家父長のような姿で形象化されてきました。日本はこれとは違って太陽神の天照大御神は女性でしたが、その後いつの間にか、家父長制に替わって、今でも男性優位の伝統は廃れず、夫婦別姓や女系天皇制への切り替えも、高市自民の歴史的圧勝で、今のところ封印されたも同然です。日本の男尊女卑は言葉にも反映されていて、「女々しい」やほとんど無価値とされる女がさらに劣化した「女の腐った」ようなと言う表現もあります。

 社会一般では、今でも“立派”な男性と別れるような女性は、罰一とか、二とか言われて、蔑視され、子供がいれば従来は母子家庭の母と言われていたシングルマザーの呼称も蔑視語になりかねません。また“立派”な男性と共に家庭を築けなかった生涯独身の女性はオールドミスで、哀れだが、どこかに欠陥があるのではと言うコノテーションはヨーロッパでも変わりません。

離婚女性 出戻り、罰一

Geschiedene

divorcee

divorcée

シングルマザー

alleinstehende Mutter

single mother

mère seule

オールドミス

alte Jungfer

old maid, spinster

vieille fille

 次に一般的な言い方を見てみましょう。性的な罵倒語は既にSchimpfwort – swear words – juron – 罵倒語の 0341 0348 で見ましたから、ここでは省略します。

女性

女、あま(尼)、おばさん/おばはん、小娘

Frau: Weib, Weibsstück, Matrone, madam, Braut, Tante, Mutti, Trine, Tussi, Schreckschraube

woman: madam, dame, matron, boot, shrew, virago, vixen, bimbo, bimbette

femme : gonzesse, greluche, rate, meuf

男性

男、野郎、おじさん/おっさん、おぢ、おやじ、若造

Mann: Mannsbild, Kerl, Macker, Typ, Bursche, Patron

man: guy, fellow, fella, stiff, lad, bloke, chap, geezer, dick

homme: gars, type, gonze, gus, gusse, zig, jules, boug, gaillard, loustic

 上記表で男性・女性と男・女を区別して使ったのは、前者はいわば書き言葉で、後者は話し言葉になっています。罵るのに書き言葉を使う人はいないでしょうから、当然話し言葉の男や女が否定的な修飾語と組み合わされることになりますが、これは男や女と言う言葉自体が否定的な意味を持っていると言うことではないでしょう。ただし日本のマスコミは、この辺のところを誤解したのでしょうか、報道時に勝手に意味を持たせて使い分けています。すなわち、犯罪事件の加害者は男・女で、被害者は男性・女性で表現するようになっています。

 川崎駅で男性切られけが、女逮捕 降車時にトラブルか。24日午後335分ごろ、川崎市川崎区のJR川崎駅で、駅員から「刃物を振り回している者がいる」と110番があった。川崎署によると、40代男性が女からカッターナイフで切り付けられて右の手のひらにけがをした。駆け付けた警察官が傷害の疑いで女を現行犯逮捕した。(『共同通信』2026.02.24

 男性優位の世界に対する女性解放運動は、20世紀前後のイギリスやアメリカの女性参政権運動から始まりましたが、これは第一波フェミニズムとも言えましょう。第二波は、1960年代のアメリカから起こり、法的平等のみならず、社会的地位や現実的な平等を目指し、ジェンダー概念が導入されて、現在も #MeToo などの形でも進行中です。ドイツでのフェミニスト(Feministin)に対する罵倒語は Emanze (リブ女)で、女性解放運動(Frauenemanzi-pation)の活動家に対して使われます。フェミニストと言う言葉は、筆者など昭和世代では、女性に優しいジェントルマンの意味でしたが、いつの間にか女権拡張論者を表現する言葉に変容しました。女性一般に対する罵倒語では、英語の bitch、フランス語の pute, salope, chienne が一般的ですが、ドイツではかっての定番であった Hure はあまり聞かなくなりました。2002年から売春が完全に合法化されているからでしょうか(Nutte は聞く)。日本でバカ女と言うところは、Miststück, Luder Hexe、また、先に見たように dumme Kuh blöde Gans など、動物と組み合わせて言うのが普通でしょう。もっと下劣になると、Mistkuh Arschkuh にもなります。これに対してバカ男と言うところでは、Blödmann Idiot と普通、動物なしで、もっと感情的になると Arschloch Drecksack, Scheiß-Wichser となります。Hurensohn Hure と同様にドイツではあまり聞かなくなりましたが、英仏語では son of a bitch fils de pute/cienne で、特に英語では依然としてよく使われています。

 最近のドイツの女子高校生に対するある男性教師の観察を見てみましょう。

Viele meiner Schülerinnen sind zwar wie meine Tochter selbstbewusst und glauben nicht mehr daran, dass Frauen zugunsten der Männer zurückstecken müssten. Sie beteiligen sich mit starken Meinungen an den Diskussionen in der Klasse. Aber die Jungs sind noch zwiegespalten. Meist können sie gut mit den selbstbewussten Mädchen umgehen, solange sie in einer Diskussion auf einer Seite stehen. Sind die Mädchen aber anderer Meinung, werden sie von einigen ihrer Klassenkameraden niedergemacht. Viele von den Jungs scheinen sich von den oft fleißigeren und klügeren Mädchen abgehängt zu fühlen – und sind in ihrer Männlichkeit gekränkt. Und das führt zu Wutausbrüchen. Meist fallen dann Begriffe wie “Emanze” oder “Feministin“, die die Schüler als Schimpfwörter verwenden. Es geht nicht mehr um das Thema, sondern um das Geschlecht. (Zeit-Online, Mansur Seddiqzai, 15. 03. 2021, 17:53)
私が受け持つ女子生徒の多くは、私の娘と同じように自分に自信を持っており、「女性は男性のために一歩下がらなければならない」といったような考えはもう持っていません。彼女たちは授業での議論にも積極的に参加し、堂々と意見を述べます。しかし、男子たちはまだ迷っているようです。たいていの場合、彼らは自信のある女子とうまくやっていけますが、それは議論で同じ立場である限りのことです。女子が異なる意見を持つと、一部の男子からけなされるのです。多くの男子は、しばしばより勤勉で頭の良い女子に置き去りにされると感じて、そこから、自分の男らしさが傷つけられると思っているようです。その結果、怒りが爆発します。そうしてよく「リブ女」とか「フェミニスト」といった言葉が、男子生徒から侮蔑的に使われるのです。もはや議論のテーマではなく、「性別」が争点になってしまうのです。(『ツァイト・オンライン』マンスル・セディクザイ)

5 性的少数者(LGBTQi+

 男女同性愛者を始めとするLGBTQi+、言い換えると、性的指向(Sexual Orientation)や性自認(Gender Identity)が異性愛や社会的多数派と異なる人々に対する罵倒語は、Schimpfwort – swear words – juron – 罵倒語の0347、性に関する罵倒語のところを参照してください。

 これまで見てきた罵倒語を浴びせられる差別の対象となる女性・LGBTQ・在日コリアン・アイヌへのヘイトスピーチで有名なのが自民党の杉田水脈元衆議院議員で、「歩く日本の恥」と呼ばれてきましたが、自民党が歴史的勝利を得た2026年の衆院選では、数多くの裏金議員が再選されている中で唯一人落選しています。これは喜ばしいことですが、それにしても本来どうしてこのような人物が候補となれるのか、理解に苦しむところです。

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