0022 Straßenbaum – roadside tree – arbre de rue – 街路樹

 Alleebaum – avenue tree – arbre des allées, arbres des routes とも言えます。都市部の通りを考えると、こちらの方が街路樹というのにぴったりです。道の方から見ると、これらの樹が植えられた道路のことを、並木路(Allee, baumgesäumte Straße – allee, avenue, tree-lined road – allée, rue arborée, rue bordée d’arbres )となります。また公園樹・庭園樹(Parkbaum – park tree – arbre de parcs )と言っても植える樹は、同じようなものでしょう。

 日本ではよく歌謡曲でも歌われます。

花はマロニエ シャンゼリゼ / 赤い風車の 踊り子の…

ご存知『カスバの女』。1955 年にエト邦枝が歌い、後に藤圭子や緑川アコら何人もの歌手に歌われています。赤い風車(ムーラン・ルージュ)は、シャンゼリゼから少し離れたモンマルトルの丘の裾にある、ロートレックなどでも有名なレヴュー劇場です。

 あれは、1980年代の半ばでしたが、深夜シャンゼリゼから凱旋門を抜け、カルチェ・ラタンに出るサン・ジェルマン大通りをやや高速で走っていると、突如どこから現れたのか、機動警察隊のパトカーに止められ、パピエ( papiers 身分証名書、外国人なら旅券)の提示を求められました。マロニエ並木の下、車の前後を自動小銃で武装した警官が堅め、異様な雰囲気の中、中央司令室から問題なしとの情報が伝わるまで、何を訊いても【シェパ】と言うのみで、身動きならずのちょっとしたピンチでした。その10年前OPEC本部襲撃以来指名手配されていた国際テロリストのカルロスが依然として逮捕されていなかった頃で、みんな神経を尖らせていた時節だったのです。シェパとは Je ne sais pas の省略形で、日本語なら「知らん」、独英語では keine Ahnung no idea というところでしょう。

 マロニエ並木(Kastanienallee – chestnut avenue – allée de marronniers )と言っても、植わっているのは普通は本当のマロン、クリ(Edel- oder Esskastanie – (sweet) chestnut – chataigne – lat.: Castanea sativa L.)ではなく、ウマグリで、日本産のトチノキ(橡の樹、馬栗)の洋種となるセイヨウトチノキ(Roßkastanie – horse chestnut – marronier (d’Inde, des Indes) – lat.: aesculus hippocastanum L.)のことです。日本種よりはよほど大きく、白い小花がたわわな円錐状に咲き、栗に少し似た葉や実が着きます。ピンクや黄色の花弁の種もあります。明治時代に永井荷風がパリに行き、でっかい橡の樹が一杯植わっていると『ふらんす物語』で驚いていました。戦前に松島詩子が『マロニエの木蔭』を歌っています。

なつかしのマロニエの木蔭に / 風は想い出の夢をゆすりて…

 1960 年に西田佐知子が『アカシアの雨がやむとき』を歌い、ロング・ヒットとなりました。初めは歌いづらかったようで、作詞者からこの曲の詞はパリをイメージしたものだから、そういう感じで歌うようにとアドバイスされたということです。

アカシアの雨に 打たれて / このまま 死んでしまいたい…

 マロニエがクリでないのと同じように、温帯の都市の街路樹のアカシアは、普通はニセアカシアのことを言います。ハリエンジュと言うのが正式の名で、ニセアカシアとは学名の種小名を訳したものですが、一般にはこちらの方が通りがいいようです(Robinie, falsche Akazie – robinia, false acacia – robinier, faux acacia – lat.: robinia pseudoacacia L.)。アメリカのアパラチア山脈の原産ですが、荒地も厭わないので、全世界に広まりました。うちの窓からも道路沿いに植えられているアカシアが見えますが、夏には小さな白い小花の房がたわわに開花します。ウィーンの宮廷料理では、これをフライにしたのが付け合せとして出てきたりします。石原裕次郎が 1962 年に『赤いハンカチ』の大ヒットを出しました。

アカシアの花の下で / あの娘がそっと瞼を拭いた / 赤いハンカチよ

 怨みに濡れた目がしらに / それでも涙はこぼれて落ちた

 青江三奈の 1968 年『札幌ブルース』にも歌われました。

アカシア並木は雪化粧 / 北斗の星さえ花の顔
 けれどもあの娘はこころを粧う / 熱い血潮で夜明けを招く

 どうも日本人はアカシアの語感が好きなようで、クールファイブやアローナイツにもアカシアがあります。1975 年の『中ノ島ブルース』――

赤いネオンに身をまかせ / 燃えて花咲くアカシアの
 あまい香りに誘われて / あなたと二人散った街…

 街路樹といえば、マロニエ、アカシアと並んでよくあるのがプラタナスでしょう。

プラタナスの葉かげにネオンがこぼれ / おもいでがかえる並木通り
五丁目のフユ子は小唄が上手 / 六丁目のナツ子はジャズが好き…

 1968 年、黒沢明とロス・プリモスの『たそがれの銀座』。銀座の連発が耳に響きますが、当時流行った曲です。プラタナス(Platane – plane, plane tree, sycamore, buttonwood – platane –lat.: platanus orientalis L.)は和名をスズカケノキ(鈴懸)と言い、晩秋に針千本のような実が下垂します。この歌の翌年にも、はしだのりひことシューベルツが『風』(北山修作詞)で歌っています。

プラタナスの枯葉舞う冬の道で / プラタナスの散る音に振り返る
 帰っておいでよと /振り返っても /そこにはただ風が 吹いているだけ…

 加山雄三のGSザ・ランチャーズの『真冬の帰り道』 1967 年。

あなたの肩さきに / ひらひらこぼれてる
 プラタナスの枯葉 / さむそな枯葉…

 小柳ルミ子の 1976 年『逢いたくて北国へ』。

「もしも二人でくらす部屋あれば / とうか私をつれてって」
 プラタナスはゆれてますか / あなたがいる北の街…

 和名の方では、立教大学の準校歌的な『鈴懸の経』が、灰田勝彦の歌で有名です。

友と語らん 鈴懸の経(みち) / 通いなれたる 学校(まなびや)の街
 やさしの小鈴 葉かげに鳴れば / 夢はかえるよ 鈴懸の経

短いので全文載せておきました。ドイツ南部の大学街テュービンゲンには街中を流れるネッカー川に中ノ島があって、そこに鈴懸の経(Platanenallee )の遊歩道があります。

 菩提樹と呼ばれる樹には、仏陀がその下で座禅して悟りを開いたと言われるインドシナノキとシューベルトの歌にあるリンデンバウム(セイヨウシナノキ、tilia x europaea L. )がありますが、街路樹で見るのは後者(Linde, Lindenbaum – lime, lime tree, linden tree – tilleul )の方です。

泉に沿いて 繁る菩提樹 / 慕い行きては 美(うま)し夢見つ
 幹には彫(え)りぬ ゆかし言葉 / 嬉し悲しに 訪(と)いし そのかげ

 ベルリンの菩提樹通り(Unter den Linden )は、すでに森鴎外の『舞姫』に出てきます。

 梓みちよが、1964 年に岩谷時子作詞の『リンデンバウムの歌』を歌っていました。

リンデンバウムの大きな幹に / 愛の言葉を彫ってきた
 リンデンバウムのみどりの木陰 / 勿忘草(わすれなぐさ)が咲いていた…

 ニレ(楡 Ulmen – elm – orme )は、日本では北大構内のニレ並木が有名ですが、歌謡曲では並木ではなく、校庭の大樹が、1963 年舟木一夫の『高校三年生』で歌われました。

赤い夕陽が 校舎を染めて / ニレの木陰に 弾む声 / ああ 高校三年生

 ヨーロッパで普通に見られるニレの学名は、ulmus spec. L.、種(spec.)は色々変わります。

 ポプラ(Pappel – poplar, cottonwood – peuplier )とは、ヤマナラシ(ハコヤナギ)やドロノキなど多くの種を集めた名称で、北大構内にニレ並木と並んで有名なポプラ並木があります。

 1963 年に吉永小百合と共演した映画「美しい暦」で、浜田光夫が『白い花の青春』を歌いました。

口笛軽く 手を組んで
 ポプラ並木の 果てしなく / ああ青春の青い空 青い空…

 1970 年にハニーナイツがCMソングで歌った『ふりむかないで』が流行りました。

ポプラ並木にちらつく雪が / あなたの足をいそがせるのか
 しばれる道が気にかかるのか / 待って欲しいな 札幌の人

 ポプラの学名は、populus sp. L.

 大阪の御堂筋には、いちょう並木があり、1970年に欧陽菲菲が『雨の御堂筋』。

いちょう並木は枯葉をおとし / 雨の舗道は淋しく光る
 あなた・・・あなたのかげを / あなたを偲んで南へ歩く…

 森昌子が1972年にデビュー曲の『先生』に続いて出した『同級生』。

肩をならべて帰る道 / 秋の落葉が降っていた
 本の間にいちょうの葉 / ふたりはさんで行きました

 メタセコイアと同じく氷河期以前の全世界に繁茂していたイチョウ(銀杏、公孫樹 Ginkgo – ginkgo, Maidenhair tree – ginkgo )ですが、その学名は、Ginkgo biloba L. です。

 楓(かえで)は、その紅葉をもみじと呼ぶため、同じようにもみじとも呼ばれます。ジンタの『天然の美(美しき天然)』や小学校唱歌でお馴染みですが、歌謡曲ではあまり聞きません。橋幸夫の『赤い夕陽の三度笠』1968年にもみじが出てくるぐらいです。

縞の合羽の肩身もせまく / どこまで引いてく長い影
 背のびしながら奥久慈河原 / 泣いて見送る山もみじ

 かえで(Ahorn – maple – érable )の学名は、acer spec. L. です。

 かし(樫 Eiche – oak – chêne )も流行歌ではあまり聞きません。学名は、quercus spec. L.

 桜並木と言えば、大阪は造幣局の「桜の通り抜けが有名ですが、西洋には日本から寄贈された、ワシントンのポトマック河畔の桜並木を除いて、ピンクの桜の並木は、あまり見かけません。ドイツのマールブルクという大学町の簡素な一角に、シュトレーゼマン通りという道があって、春になると通り一杯にピンクの桜が満開となりますが、これも日本からの樹だということでした。ボストンのチャールズリバー沿いの公園でも4月から5月にかけて、桜が満開ですが、こちらは白で、日本のではなさそうです。桜自体は日本の歌にはよく見かけますが、桜並木というと、ポップスでスガスカオや木山裕策の「桜並木」やyozucaRakeの「桜並木の下で」などでしょう。

Marburg           Boston         Tübingen

© Marburg (Wikimedia), Boston (deepstsky.net), Tübingen (ibid.)

 日本の桜は、実のならない品種(Zierkirschen – ornamental cherry – prunier décoratif )で、特ソメイヨシノが多く、学名は、prunus spec. L. や後者の cerasus x yedoensis (Matsum.) A.V.Vassil. Somei-yoshino’ となります。

 白樺並木も山岳地帯や高緯度の地域には、よく見られますが、もちろん北大キャンパスにもあります。シラカバ(Birke – birch – bouleau – lat.: Betula sp. L.)。

 青森や秋田には、りんごの並木道があるようですが、りんごやみかんなどの果樹(Obstbaum – fruit tree – arbre fruitier )は、普通は果樹園(Obstgarten – orchard – verger )で栽培するものでしょう。

 ドイツには、全土の美しい並木道のある街を、北はバルト海(Ostsee – Baltic Sea – mer Baltique )から南のボーデン湖(Bodensee – Lake Constance – lac de Constance )まで、全長約 2900 km の一本の並木道で結ぶというドイツ並木街道(Deutsche Alleenstraße)がありますが、一般にはあまり知られていません。街の名で言うと北のリューゲン(Rügen)から南のコンスタンツ(Konstanz)までとなります。

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